令和のキャリアを考えるブログ

【転職支援】銀行→事業会社財務部門への転職(第1回)

<目次>

 

0.はじめに

自分は新卒で銀行に入り、6年目の29歳で事業会社(時価総額300億円くらい)の財務部門へ転職、MBA留学を経て現在は某社の経営企画部にいます。 

自分の転職した2014年は、景気も上り調子で周りに転職希望者がいなかった(私も1社目の転職は家庭の事情によるものでした)のですが、ここもと銀行の人員削減の影響なのか、様々な銀行の方から「事業会社の財務に転職したいんですが、ノウハウを教えていただけませんか?」という相談を受けるようになりました。

最初は「こんな話で役に立つのか?」と恐る恐る・・でしたが、先週で相談を受けた人数が10人を超えたので、一定のニーズはあるだろうと簡単に文章にまとめてみました。

この文章は、相談者の相談内容、私自身の経験(転職活動時や現職で感じたこと)、他社の財務部門社員(大手からベンチャーまで)の話を(個人や会社が特定されない形で)総合して書いています。可能な限り網羅的・客観的に書いたつもりですが、鵜呑みにせず色々な所から情報を集めていただけると幸いです。

1.財務部門の業務内容

事業会社財務部門の業務領域は会社によって違いはあれど、メインの仕事は、事業成長のための資金調達です。終わりの見えない低金利や銀行の運用難等により有利子負債での調達がしやすい状況ですので、一般的に事業会社の有利子負債残高は増加基調です。

それに伴い、財務部門での人員増強も続いているため、転職環境は悪くないと言えますし、その中でも銀行出身者かつ融資経験者は反対側を担う(カウンターパート)ですので、業務親和性が高く採用の土台に乗りやすいです。

ただし、転職を希望される方とお話しするにつれて、財務部門のニーズや採用の考え方について、(情報の非対称性が原因なのか)誤解があると感じることはがあり、以下にその内容をまとめます。

2.大企業財務部門が求めるレベルは年々上がっている

財務部門への転職希望の銀行員は、少なくとも一度は大企業(=商社、メーカー等いわゆる「ネームバリュー」のある老舗企業)への転職を考えると思います。言うまでもありませんが、商社や老舗メーカーは有利子負債が多く、独立した財務部門を持っており、数十名規模の社員を抱える花形部門であることが多いです。

ただし、前述のとおり、このレベルの会社は間接金融からの調達が容易(特に現在の力関係は、圧倒的に銀行<事業会社)であるため、「銀行の相手だけができる」だけでは経験として足りません。

主戦場が海外にシフト(国内は事業の選択・集中かつ業界内での合従連衡がメイン)が進む中、財務部門のミッションが国内/海外問わずM&Aやその後のPMIへ向けた資金調達になりつつあり、社債発行(格付会社との協議含む)に加え、エクイティを絡めたM&Aファイナンスに対する知見が必要になります。

加えて、日本円以外での取引が多い場合は外国為替(L/C等)、原油コモディティが必要な事業であればデリバによるヘッジ、日本で資金調達してCMSで海外子会社に送金する場合は、マルチカレンシーのシローン組成に関わることもあります。商社であればプロジェクトファイナンス組成から事業全体のモニタリング、事業会社でCVCファンドを財務部門でモニタリングしている場合はVCっぽいノウハウも求められます。

銀行からの転職者の場合、外資投資銀行/証券のExカバレッジバンカーたちとの戦いに勝てるか?という懸念があります。彼らは大企業のグローバルベースでの資金調達やM&A支援の経験がありますし、大企業役員と渡り合ってビジネスする経験もありますので強敵です。加えて、コンサルEx-FASもポストコンサルとして企業の財務部門を狙ってくる場合もあります。銀行キャリアだけでは少し厳しく、彼らと戦うだけの相応の英語力や+αのスキルや経験が必要となります。

3.それではベンチャー〜中堅企業ならどうか?

企業規模が小さくなればなるほど、人員に余裕はありません。この場合、そもそも資金調達担当だけで募集が出ることが稀です。リースや不動産のように、ファイナンスが取れないとそもそも事業自体が成り立たない、という場合以外は、財務・経理部がセットになり、両方を一人でカバーする場合が主です。経理の仕訳が「切れる」と「読める」は別次元なので、こうした部門の場合は経理経験者が銀行経験者に優先して採用される傾向があります(経理経験=Must、財務or銀行経験=Nice to haveという求人が多い)。

また、非上場でVCが入っているケースの場合は、VC向けのレポーティングと新規ラウンドでの調達に関わることがあります。銀行目線でのデューデリ(=安全性や資金の償還可能性を重視)と異なり、VCがかなりForward Looking(=安全性より成長性)なので、銀行っぽい分析や報告をすると相手のニーズとずれる可能性もあります。 

めったにないですが、経営企画部といった事業企画部門に資金調達部門が紐づいているケース(事業運営や新規事業企画を積極的に行う会社に多いです)がありますが、この場合は戦略コンサル出身者が選考過程で強力なライバルとなります。(正直、コンサルはFAS以外財務をあまりわかっていないことが多いのですが、事業をドライブすることはプロですので、競り負けることは多くあります)。(次回に続く)